ジャパンラグビー2007トップリーグ マッチレポート(花園)

 


2007トップリーグ最終節マッチレポート(花園)

 


 トップリーグ最終節、2月3日・日曜日、冷たい雨の降る近鉄花園ラグビー場で、クボタスピアーズ vs 九州電力キューデンヴォルテクス、神戸製鋼コベルコスティーラーズ vs 日本IBMビッグブルーの2試合が開催されました。前日、東芝ブレイブルーパスがヤマハ発動機ジュビロに勝ったために、神戸製鋼のトップ4入りの可能性は消え、反面、残りの3チームのリーグ残留がかかるという試合となりました。以下、そのレポートをお伝えします。

2月3日(日) 近鉄花園ラグビー場 12:00〜 KICKOFF
クボタ
スピアーズ

27
5 - 12

22 - 8
九州電力
キューデンヴォルテクス

20
2月3日(日) 近鉄花園ラグビー場 14:00〜 KICKOFF
神戸製鋼
コベルコスティーラーズ

28
21 - 11

7 - 15
日本IBM
ビッグブルー

26


 この結果、クボタは8位、九州電力は10位でリーグ残留、日本IBMは、11位で入替戦を戦うこととなりました。また、神戸製鋼は、この日秩父宮の2試合が雪で延期されたために順位が確定せず、暫定5位となりました。    なお、この日は、ファンの皆さんと選手が握手を交わしてお互いの絆を強め合う「Shake Hands Project」が行われました。マッチレポートに先立ってまずその模様を写真でご紹介します。






◎ クボタスピアーズ vs 九州電力キューデンヴォルテクス マッチレポート
 低温かつ雨中のゲームは、序盤10分間キック中心の淡々とした展開となる。 11分クボタゴール20m付近で、クボタWTB大津留が狙ったタッチキックを チャージした九州電力LO吉上がこぼれ球をインゴールで押さえ先制T(0-5)。 クボタもSO伊藤のショートパント等で九州電力DFラインをこじ開けようとするが、ハンドリングミスで崩せない。それでも18分、NO.8ホラニ、FL鈴木の連続アタックからチャンスをつかみ、SO伊藤のパント処理をもたついた九州電力の隙を突き、WTB根岸が右隅にトライし、同点に追いつく。(5-5)
 ここからボールが急に動き出し、モールで執拗に攻める九州電力であったが、クボタのDFが厚く、ゴールラインを割れる雰囲気がない。ようやく29分、クボタゴール前20m付近スクラムからパスアウトしたボール、SO斎藤が巧くずらしたところに、CTBグレイが縦に入りDFラインを突破、フォローしたFB今村が左中間にT(G成功5-12)。クボタはCTBオツコロの突破を起点に九州電力ゴールに迫るが、BKラインが流れ気味なこともあり、九州電力のDF網を崩せない。

 後半もCTBグレイのアタックに翻弄、1T、1PGを加点され苦しくなったクボタだが、15分マクイナリを投入したことで、流れが一転する。再三巧みなランでビッグゲインを繰り返す動きは、クボタに勢いを与える。18分、21分と連続Tを挙げ点差を詰めると(15-20)、32分、連続ラッシュで九州電力DFの綻びを突き、最後はSO伊藤がゴールポスト下へT。コンバージョンも決め22-20と逆転する。ゲームを完全に支配したクボタは、34分再びマクイナリの突破からFWが良く繋ぎ、途中出場のFL岩上がトライ(27-20)し、トップリーグ残留を決めた。


(写真1 九電厳しいDF)


(写真2 雨中の空中戦)


(写真3 九電攻撃の中心グレイ)


(写真4 クボタホラ二DFを引きずって前進)


(写真5 九電素早い展開)


(写真6 クボタ安定したパスアウト)


(写真7 九電DF果敢にチャージ)


(写真8 クボタFW押し込んでトライ)

◎ 会見レポート
【九州電力キューデンヴォルテクス 神田監督】
 九州電力にとっては初めてのトップリーグ、その最終戦を迎えた。選手には、「九電らしいあきらめないしぶといプレーをするように」と指示して送り出した。今日は逆転を喫する結果となったが、一年間を通して見ると選手は良く頑張ってくれた。入替戦になるかも知れないが、結果は真摯に受け止めたい。

【九州電力キューデンヴォルテクス 吉上キャプテン】
 残留をかけての試合、厳しい80分だった。最後まで集中力を切らさないように努力したが、最後の20分でクボタの気迫に負けた。初めてのトップリーグを最後まで戦ってよい勉強になった、FWのセットプレーが強化されBKに活きたボールを供給するという点で成長した。来期に向けて明確な目標が見出せたように思う。

(後半に勝負がついたがフィットネスが課題か?)
神田監督:
 詳しくは分析したいが、フィットネスではなく、集中力が持続できなかった点にあるのではないか。初めてのTL、5勝、20ポイントを目標にした、20ポイントは達成したが、5勝はできなかった。来シーズンに向けて強化して行きたい。


【クボタスピアーズ 山神監督】
 九電は、かつて予選プールで対戦をした相手で今日も残留をかけた試合となり、何かの縁があるように思う。今日の試合は、ケフがイエローカードを3回受けて出場できなったことなど不利な面があったが、もっと失点を抑えて欲しかった。前半最後に得点を取りきれなかったことや、後半に先制のトライをされたことなどで、その結果ランニングスキルの高いマクイナリを早めに使うことになった。この辺りがゲームの「あや」というか、これをきっかけにして流れが良い方向に向いた。とにかく8位を死守できてよかったというのが実感だ。

(トップ4に向けて何が必要なのか?)
山神監督:
 今シーズン、DFを固めるのを第一に考えて来た、DFが崩れると試合にならないからだ。しかし、攻撃力という点では、ケフ、マクイナリへのマークが厳しく一歩及ばなかった。来期に向けては、攻撃に際しての選手の判断のスピード、BKラインのスピードを上げるのが課題と考えている。



◎ 神戸製鋼コベルコスティーラーズ vs 日本IBMビッグブルー マッチレポート
 プレイオフ進出の可能性が無くなった神戸製鋼と、入替戦出場回避を狙う 日本IBMのモチベーションが微妙に違うゲームであったが、パントキックをチェイスする神戸製鋼HO村上、NO.8伊藤の動きにはモチベーションがうかがえる滑り出し。5分、セットプレーの精度が低い日本IBMのこぼれ球を神戸製鋼CTB高倉が拾い縦突破、パスを受けたCTB今村が右中間にトライし、あっさり先制(G成功7-0)。対する日本IBMも10分、神戸製鋼陣22mラインアウトからモールで押し込みBK展開、WTB道廣が右隅に飛び込みT(7-5)。
 17分にもPGを決められ逆転された(7-8)神戸製鋼は20分、日本IBMのキックをPR清水がチャージ、こぼれ球をFLブラッキーがドリブルし、そのままインゴールで押さえT(G成功14-8)。
 その後、日本IBMが1PGを返すも、連続ラックでリズムが出始めた神戸製鋼は32分、ラインアウトを起点としたモールを押し込み、最後はHO村上が押さえT(ゴール成功21-11)、前半を折り返す。

 後半序盤、リズム良く攻撃を繰り返す神戸製鋼だが、アクシデンタルオフサイドでチャンスを潰した辺りから、日本IBMに流れが傾く。6分日本IBMがPGを決める(21-14)と、神戸製鋼はクリブを投入しボールキープ力を上げようとするが、安定したモールが形成できず、逆に12分、日本IBMが神戸製鋼DFの裏をキックで突き、WTB勝俣が押さえT。Gも成功し、同点となる(21-21)。
 クリブを軸に、日本IBMゴール前に迫る神戸製鋼だが、ケアレスミスでチャンスを潰してしまう。それでも、連続ラックでなんとかボールキープする神戸製鋼は22分、日本IBMゴール正面のラックから左展開、日本IBM、DFのギャップをCTB高倉が突きT(G成功28-21)。FWの出足が鈍くなった日本IBMに対し、残り10分を切ってペースに乗った神戸製鋼、勝負ありかと思われたが、前がかりになったところを、ターンオーバー・逆襲され、再三ピンチを招いてしまう。37分、神戸製鋼FWの核であるクリブがシンビンになり、FW戦で俄然有利になった日本IBMは、モールで押し込み、最後はNO.8フィリピーネが右隅にT(28-26)。前年も自動降格のピンチを救ったゴールデンブーツFB高に、入替戦回避の夢を託したが、引っかけてしまいノーゴール。結果、勝ち点1の上積みしかできなかった日本IBMはリーグ11位となり、入替戦の出場が確定した。


(写真9 IBMブレイクダウン)


(写真10 神戸BKのスピード)


(写真11 IBMFWの牽引車フィリピーネ)


(写真12 神戸伊藤DFをかわす)

(写真13 IBM懸命のDF)


(写真14 IBMスクラムからのパスアウト)


(写真15 神戸FW攻撃の軸クリブ)


(写真16 神戸後藤キャプテン1対1)

◎ 会見レポート
【日本IBMビッグブルー 安藤ヘッドコーチ】
 冷たい雨の中来ていただいたファンの皆様にお礼を申し上げたい。天候に加えてリーグ最終戦、勝点や入替戦など不安要素のある中、モチベーションの維持が難しいゲームだった。しかし、選手はベストを尽くしたと思っている。結果として、最終戦を勝利できなかったことについては、コーチ陣として責任を感じている。次の試合、80分間全力を出し切るだけだ。

【日本IBMビッグブルー 高キャプテン】
 大事な試合で、最終的に同点に追いつけなかった。一つ一つプレーの精度の上積みをするようにしてきたが、結果として十分にできなかった。次の入替戦に向けて頑張りたい。

(最後のGKを外したのは?)
高キャプテン:
 このGKが入れば、入替戦を避けられるというのは分かっていた。努めて平常心を維持するようにしたのだが…結果として力が入ったのか、大きくダフってしまった。



【神戸製鋼コベルコスティーラーズ 平尾GM兼総監督】
 昨日のヤマハと東芝の試合結果でMS杯の可能性がなくなったため、モチベーションが不足していたのか、試合内容は良くなかった。それに比べるとIBMは順位争いの中で「勝つ」ことにこだわった違ったモチベーションがあったと思う。暫定5位、9勝4敗の結果、上位4チームに勝つことができなかったし、チームに何が足りないかも分かった。個々の選手が基本的な動作や判断で速さと強さを備えなければ上位に勝てない、それが課題だ。

【神戸製鋼コベルコスティーラーズ 後藤キャプテン】
 13試合勉強になった一年だったが、勉強だけではいけないので勝利に結び付けたかった。キャプテンになって、プレーへの視点が変わった。自分のプレーを高めることとチームが勝つことの2つを満足させるために来期頑張りたい。

(今シーズンを振り返って?)
平尾監督:
 久しぶりに現場の指揮をとって、まずは勉強だった、ラグビーは進化し続けるスポーツだ。今シーズンの9勝4敗という結果を最低のラインにおいて新しいスタートを切る。これからどこまでできるかを見てもらいたい。



(記事:廣島治、長澤孝哉 写真:長谷川昭男)

(広報担当者:村島 博)