ジャパンラグビー トップリーグ2013-2014

 


ワイルドカードトーナメント 2回戦 マッチ・会見サマリー
(近鉄花園ラグビー場)

2月8日(土) 12:00Kick Off

 7 -  0
11 -  3
トヨタ自動車ヴェルブリッツ
18
近鉄ライナーズ
3


◎ トヨタ自動車ヴェルブリッツ vs 近鉄ライナーズ マッチ・サマリー

  第51回日本ラグビーフットボール選手権大会の出場をかけたワイルドカードトーナメントもいよいよ最終戦。1回戦でリコーを破ったトヨタ自動車と上位チームであるグループAのキャノンを破った近鉄との争い。関西地区で古くから幾度となく死闘を演じてきた両チームは、新方式となったジャパンラグビートップリーグ2013-2014では対戦がなく、今季初めての対決となる。昨夜からおよそ10年ぶりにピッチに降り積もっていた雪も小雨に変わり、肌を刺すような寒さにも関わらずスタンドに陣取る2,000人を超える両チーム応援団の必死の声援を受けて、試合は、トヨタ自動車SO文字のキックオフで開始された。

  前半開始直後はこう着状態。両チームとも足場の悪い中でも積極的にパスを展開して相手陣に攻め込むが、特に近鉄はエリアの大部分を支配していたにも関わらず肝心な場面で濡れたボールが手につかず、ハンドリングエラーや相手FWによるターンオーバーで得点できない。ようやく前半23分、数少ないチャンスをものにしたトヨタ自動車が、近鉄のミスキックで得たゴール前10mの右ラインアウトから形成したモールをFWが一体となって押し込み、最後は左FL6番ホップグッドが右中間に押さえて均衡を破った(G成功7-0)。しかし両チームにとって前半はこれが唯一の得点。近鉄は8分、41分にPGのチャンスを得るが、いずれもSO重光のキックはゴールポストを超えることが出来なかった。

  後半、風上に立ったトヨタ自動車はSO文字やFBイェーツの精度の高いキックを有効に活用して、徐々にゲームを支配し始める。後半最初に得点したのは近鉄。14分にトヨタ自動車のオフサイドで得たゴール前10mポスト左からのPGを、FB高が着実に決め7-3と1T差に迫る。しかしその直後の21分、今度はトヨタ自動車SO文字がPGを決めて10-3と再び得点差を広げる。さらにトヨタ自動車は32分に22mライン付近右中間のラックよりSH20番麻田が左に展開し、左FL6番ホップグッドが上手く№8杉本からのリターンパスを受けて左中間にトライ、時間的にも試合をほぼ決定づけた(G不成功15-3)。トヨタ自動車は終了間際にもSO文字がPGに成功、最終的に18-3で2年連続18回目の日本選手権出場を決めた。
  この試合で近鉄は2013年度のシーズンを終了したが、2ndステージ以降好調を維持して上位チームとも接戦を繰り返した。2014年度はさらに精度を向上して、上位進出を目指してほしい。一方のトヨタ自動車は日本選手権1回戦では大学チャンピオン帝京大学と対戦するが、この日のゲームのような強固なディフェンスでトップリーグチームの力を見せつけたい。第51回日本ラグビーフットボール選手権大会は2月16日、秩父宮ラグビー場と近鉄花園ラグビー場で開幕する。




◎ 会見サマリー

【近鉄ライナーズ 前田隆介監督】
今年も日本選手権の一歩手前で跳ね返された結果になった。年間を通じて暖かい声援を頂いたファンの方々に改めてお礼を申し上げたい。また、ワン・シーズン身体を張り続けてくれた選手にもお礼を言いたいし、感謝している。試合は前半からテリトリーをしっかり抑えていたが、なかなかボールをスコアゾーンで継続できず、ブレイクダウンで終始プレッシャーを受けて我々の流れでボールを動かすことができなかった。今日は負けたが、ゲームとこのシーズンをしっかり振り返るとともに、一年間頑張ってくれた選手達と支えてくれたスタッフの皆にお礼の思いをしっかり伝え、そして、これからも手を抜くことなくやって行きたい、本日は本当に有難うございました。

【近鉄ライナーズ 森田尚希ゲームキャプテン】
シーズンが終わった実感はないが、ここ数年日本選手権出場手前で悔しい思いをしていたので、今日のトヨタ戦に向けて一週間いい練習をして、自信を持って試合に臨んだ。前半、風上スタートでエリアも獲れて相手陣でプレイができたが自分達のミスで取りきれなかった。逆に相手は風下のリードで折り返し、相手のリズムにされてしまったという印象だ。しっかり準備をしてきた自分達の実力を出し切ることができず、点差以上に悔しい試合だった。今日でシーズンは終了するが、しっかり来シーズンに向けてブレイクの間、各自で備していきたいと思う。

(ブレイクダウンでトヨタは想像以上に強かったか?)

前田:ファイトしたトヨタは良かったと思うが、我々からするとアングルだったり、ゲートだったりがクリアになっていなかったと思う。ラインアウトもそうだったが、選手達は戸惑っていて、最後はトンプソンがイエローカードをもらう状況になった。どこでも人数をかけてファイトしたトヨタに対して我々は受けてしまった。

(雪が積もったグラウンドは、これまで経験がなかったのでは?)

森田:朝は、ピッチ一面真っ白だったが、花園は、精神的にもやりやすい良いグラウンドなので、雪とかには関係なく試合ができた。

前田:朝はラインだけしか見えない状態だったが、キックオフまでの間、スタッフの方々が雪かきをしてくれたので、その点感謝している。花園は水捌けの良いグラウンドなので、悪いコンディションでなかったと思う。

(重光選手の体調は厳しくなかったか?)

前田:脳震盪したゲームの次の試合は、本人の意思に反して休ませた。次の試合ではックを決めているし、今日は足場とステップとの部分でちょっと狂いがあったと思うがが、入るも入らないもこれがラグビーだと思う。

(シーズンを通じての課題は?)

前田:詰めの甘さ。もっとトライの獲れるところで自らボールを放し、戦い方もキックでバランス良く攻めればもっと楽に試合が運べた。自陣からもしっかり継続するプランを持っていたが、実際の状況と判断との境目で上手く我々の流れに乗れなかったと思う。



【トヨタ自動車ヴェルブリッツ 廣瀬佳司監督】
本日は有難うございました。何とか近鉄に勝って日本選手権に出場を決める思いで試合に臨んだ。このコンディションで堅いゲームになってしまったが、良くディフェンスもしてくれたし、ターンオーバーもしてくれた、厳しいプレイのトヨタらしいゲームに満足している。次は学生でどちらになるか判らないが、我々トップリーグの代表としてしっかり戦いたいと思う。

【トヨタ自動車ヴェルブリッツ 上野隆太キャプテン】
雪が積もっている中で協会の方々はじめ多くの人達にグラウンドを整備してもらい有難うございました。この様なコンディションでミスはお互いにあったが、しっかりしたディフェンスで守り切れて良かった。アタック面ではボールを動かし相手陣ではもっと粘り強く攻撃したかったが、このようなコンディションでしかたがなかったと思う。次は帝京大か早稲田大だが、学生との隔差等を意識せずに、しっかり準備して良いゲームをしたい。

(風下の前半からのキックはプラン通りか?)

廣瀬:もう少しボールをキープして行くべきだったと思う。前半途中、上から指示をだしたが、グランドレベルでは裏が空いているといった判断だったのだろうが、本来ならボールをキープしてFW近辺のパワープレイで臨んでほしかった。

(ゴール前ピンチでスクラムを7名で凌いだが、心掛けたことは?)

上野:押してくると思っていた、7名が集まって低く組むことと勝負どころで声をかけて、しっかり方向性を示せた。

(途中から再出場となったが・・・)

上野:準備はしていたので、大丈夫だった。

(シーズン後半に良い勝ち方をしているが、それまで良くなったところは?)

廣瀬:ウインドウマンス明けに4連敗しても悲観的になってはいなかった。ゲームのあやのところで勝敗が分かれていたので、チームとしては何も変えるのではなく、春からの取り組みを徹底してゲームに出すようにした。選手達にはこの趣旨を再徹底し、彼らもブレることなくやってくれた。

上野:やることは変えていない。ウインドウマンス明けから4試合負けて、相手もトップ4で強かったが、年明けから自分達のラグビーが試合中にできて、自信に繋がって勝つことができた。

(大学生との試合で気をつけることは?)

廣瀬:僕も経験しているのでやりづらい(笑)、トップリーグと同じようなプロセスを意識してしっかり戦いたい。確かに大学生相手の試合には、難しいところがあり、観客も期待するし、レフリーの判断もある、さらに会場は秩父宮だ、しかし、それらをみんな受け入れて試合に臨みたい。今のチームには早稲田大に負けた時の現役も残っているので、頑張ってくれると思う。

(文字選手を起用しているが、彼の良いところは?)

廣瀬:リーダーシップがでてきた。自分でゲームコントロールしなくてはいけないので、そのような意識を持って練習もしている。まだまだスキル面ではものたりないが、チームにとっていい存在となりつつある。




[敬称略]

(記事:蜷川善夫、石川悟、玉川育夫 写真:長谷川昭男 広報担当:村島博)