第51回日本ラグビーフットボール選手権大会

 


第51回日本ラグビーフットボール選手権大会準決勝
マッチ・会見サマリー
(近鉄花園ラグビー場)

3月1日(土) 14:05Kick Off

 
サントリーサンゴリアス
24
17 -  6
 7 - 19
東芝ブレイブルーパス
25


◎ サントリーサンゴリアス vs 東芝ブレイブルーパス マッチ・サマリー

  春霞がけむっているかのような曇空がやがて雨へと変わる波乱含みの天候の下、近鉄花園ラグビー場で行われる2013-14シーズンの公式戦最終試合、レギュラーシーズン・セカンドステージでは、サントリーサンゴリアスが30-29の1点差で東芝ブレイブルーパスを下している。

  前半、風下からの東芝キックオフで試合が開始される。先攻したのはサントリー、22mL付近まで攻め込み、右中間のラックからショートサイドに展開、CTB12番ニコラス・ライアンがSO小野晃征へインサイドにスイッチ・パスをするとタックルミスにも助けられ小野は東芝ディフェンス・ラインの裏深く走り込み、最後はFB有賀剛へと繋ぎ右隅にトライ、ニコラスが難しい位置からのGKを決め7-0と先手をとる。一方、東芝は自陣に攻め込まれるもののディフェンスが耐え、キックで徐々にサントリー陣内に攻め込み、11分15m中央で得た反則からSH小川高廣がPGを決め7-3とする。この後、両チームとも1PGを加え10-6で迎えた前半の終盤31分、サントリーはゴール前15m左中間スクラムから右展開、クラッシュ後ラックにし、左ラックサイドに走り込んできたFL6番ヘンドリック・ツイに逆の攻撃方向へと振返してのパスアウト、ツイそのまま走り抜け中央にトライ(GK成功)。これに対して東芝はサントリーの固いディフェンスにショートパントを使ってラインの裏側へ出ようと試みるが実らず、17-6とサントリーのリードで前半を終える。

  後半立ち上り、風上に立った東芝の巻き返しが期待されたが、先取したのはまたもサントリー。開始早々の2分、ゴール前15mで得た東芝オフサイドの反則からSHデュプレアがタップ・キック、速攻をしかけ一気にポスト右にトライ (GK成功)、24-6と引き離し、試合はサントリーペースへと大きく傾くかに見えた。しかし、東芝は、前半から続くセットプレイ、ブレイクダウンでの優位を背景にたゆまずアタックを繰り返し、16分ゴール前5m左ラインアウトモールからFL6番スティーブン・ベイツが抜け出しこの試合初めてのトライを返すと(GK成功、24-13)、ここから東芝は息を吹き返したかのように総力を挙げて反攻に移る。10番ヒルの入替に伴いWTBからSOに入った14番廣瀬俊朗が自陣から有効な2本のキックで相手ゴール前まで迫った19分、さらに東芝はFWの猛攻を繰り返してGLを割り、ここでグラウンディングを見極めるTMO判定となる。このトライは認められなかったもののこの後も東芝はサントリーをゴール前に釘付けにし、21分にスクラムでの反則でペナルティートライを得、24-20(GK成功)とすると、スタンドの東芝ファンからは一層のスリリングな展開を期待して大きな歓声が沸き起こる。これに対して、サントリーはハーフ団をSH日和佐篤、SOトゥシ・ピシに入替え、試合の流れを引き戻しにかかる。しかし、東芝の勢いは止まらず、25分ゴール前5m左ラインアウトから得意のモール・ドライブでFLベイツがこの日2本目となるトライを挙げ、24-25とついに逆転に成功する。緊迫の試合もいよいよ残り5分に入り、両チームとも必死の攻防を続けるが、ここに至って東芝は自陣で反則を繰返し、サントリーは、22mL左タッチライン際でラストチャンスを得る。そして、CTBニコラスが慎重にPGを狙うが、逆風の中キックはポスト左に僅かに外れ、直後無情のノーサイドホーンが鳴り響き、東芝カフィがボールをタッチダウン熱戦に終止符を打った。

  試合後の記者会見で、サントリーの大久保監督は東芝の全員で前に出る意識が上回ったと述べ、東芝の和田監督も選手のプライドを勝因の一つとして挙げた。東芝選手達の、特に後半に見せた集中力がPGの結果次第でどちらに転んでもおかしくない1点差の接戦を制したといってよいだろう。この結果、東芝ブレイブルーパスはレギュラーシーズンの雪辱を果たして7シーズンぶりの日本選手権決勝進出を果たし、一方のサントリーサンゴリアスは、惜しくも4連覇を逃すこととなった。




◎ 会見サマリー

【サントリーサンゴリアス 大久保直哉 監督】
今日はありがとうございました。非常に残念な結果で終わってしまった。今シーズン無冠で終わったという現実は真摯に受け止めて、次のステップにつなげていければと思っている。

【サントリーサンゴリアス 真壁伸弥 キャプテン】
今年の目標を一つも達成することができなかった。この悔しい思いをしっかりと受け止めて、次のシーズンには必ず取り戻すのだというハングリーさを皆さんにお見せできるよう頑張っていきたいと思っている。本日はありがとうございました。

(後半、急に流れを失ってしまった原因は?)

大久保:決して気が緩んだとか油断したというより、現実に終始スクラムでは劣勢だったし、ここ一番のラインアウトもしっかり取れなかったなど、相手にチャンスをこちらから与えてしまった。このレベルの試合では、一度失った流れは簡単には取り返せない。

(スクラムが終始劣勢だった要因は?)

大久保:東芝さんの1~8番までの前に出ようという意識が我々よりもはるかに高かったし、体重が重いとか軽いとかではなく塊で前に出ようとする意識、本当に10センチ~20センチの話だが、そこにこだわったチームとこだわれなかったチームの差だと思う。

(トップリーグでの接戦を踏まえての今日のゲームプランは?)

大久保:東芝さんとのゲームはいつもブレイクダウンとコンタクトがキー。東芝さんは我々と同様にある程度ボールをキープしてくるので、ディフェンスで規律を守って、そこから自分達のアタックにつなげようと考えていた。前半ディフェンスは機能していたが、後半、流れを一度失ったところでパニックに陥ってしまい、自分達の規律を自分たちで失ってしまった。前半と後半はまったく違うチームだった。



【東芝ブレイブルーパス 和田賢一 監督】
本日は雨の中にもかかわらず多くの方々に来ていただきありがとうございます。試合は最後のPGの成否で勝敗が決まるという接戦だったが、お互い意地を出してこだわりの出たゲームではなかったかなと思う。最後のサントリーさんのPGに至る前の過程で選手が一つ一つのプレーにこだわりプライドを持って戦ってくれたことがこの結果になったと思っている。次のファイナルに向かっては、パナソニックさんに今年度は3回負けているので、しっかり準備して勝つラグビーをしたい。

【東芝ブレイブルーパス リーチ・マイケル キャプテン】
今日は雨の中多くの方に会場まで来ていただきありがとうございます。今週は先発メンバー外のプレイヤーがすごくいい準備をさせてくれた。前半はなかなかいい展開に出来なかったが、後半は風上の中でスコアエリアに行くことを意識し、そこに入ればスコアできたので東芝のやりたいラグビーをすることができた。来週のパナソニック戦に向けては、もっといい準備をして日本一を獲りたいと思う。

(前半劣勢の中でのハーフタイムでの修正点・指示は?)

リーチ:前半もFWがボールを持つと必ずゲインできていたので、相手陣に入ってプレーをしようという意思統一をした。

和田:ブレイクダウン自体は支配できていたが、ただフェーズを重ねれば重ねるほど東芝のアタックのセットアップが遅くSHの球出しが少しずつ遅れてきていたので、もう一度セットアップを早くしよう、そうすれば必ずスペースは生まれよりボールを動かせる、それと、エリアをしっかり取って攻め急がないこと、この二点を指示した。

(今週の選手起用とディフェンスについては?)

和田:ボールを前に運べる選手、ナチュラルにボールをスペースに運べる選手ということで選手を起用した。よりボールを動かすという戦術・戦略の上で決めた。ディフェンスに関しては、前週のトヨタ戦ではかなり抜かれる場面が多かったので、今週は前に出るということを意識し修正した。




[敬称略]

(記事:蜷川善夫、山林右二、高橋茂治 写真:長谷川昭男 広報担当:村島博)